【2020年5月上海】新型肺炎で延期になった全人代、政府活動報告読んでみた
コロナウイルスの影響で、2ヶ月遅れの2020年5月22日に、全国人民代表大会(全人代)が開催されました。コロナウイルスへの勝利宣言や、政府活動報告ではGDP成長率の目標発表、などが注目どころです。知り合いから政府活動報告の日文訳をもらったので、中身を読んでみた感想を述べていこうと思います。個人的にはアメリカとの貿易摩擦も気になるところです…。
政府活動冒頭で1番にはコロナウイルスに関する記載があります。勝利宣言どころか、「感染症は今なお終息しておらず、新中国成立以来我が国が見舞われた最も難しい公衆衛生事件である」とのこと。完全勝利だ!みたいな感じかと思ってましたが結構冷静なことが書かれています。
2019年および今年の活動の回顧
経済の動きは全体的に安定していた、とのこと。GDP成長率は6.1%の伸び。都市部の新規就業者数が1352万人、失業率は5.3%以下に保たれた。消費者物価が2.9%上昇した。
その他、農村の貧困人口が1109万人減少、貧困発生率が0.6%にまで下がった。
色々な具体的な数字を並べて、昨年の結果が述べられており、概ね結果として良かったものが記載されているようです。
今年の発展の主要目標と次の段階の活動の全般的計画
ちょっと気になるところは、就業者数とか失業率の記載部分です。やっぱりこのコロナウイルスの影響で多くの人が失業しているのでしょう…。目標は、都市部新規就業者数900万人以上、都市部調査失業率は6%前後。消費者物価の上昇率は3.5%前後。住民所得の伸び率は経済成長率とほぼ同じにする、などなど。
経済成長率については、「具体的な年間目標を提示していない」とのこと。どうやら経済成長率の目標値はコロナウイルスの影響もあって提示しないようです。何で?笑。
財政政策に関しても記述があります。今年の財政赤字の規模は前年度比1兆元(日本円で15兆円)増、さらに感染症対策特別国際を1兆元発行する。計2兆元(日本円で計30兆元)はすべて地方への移転支出として計上し、企業と大衆に直接的利益をもたらすようにする、とのこと。要は財政政策を出動して企業と大衆に利益をもたらしてくれる、ということでしょう。今のところうちの会社や自身に利益がもたらされた、ということはありませんが。
マクロ政策の実施に力を入れ、企業の安定化と雇用の保障に努める
雇用に関する記述は今のところ結構記載がありますね…。国も結構気にしているのでしょう。それに加えて企業の安定化にも力を入れてくれるとのこと。具体的には増値税率(日本でいう増値税)や企業養老保険料率の引き下げの継続実施などなど。新たに軽減する租税・料金の総額は5000億元(日本円で7兆5000億円)となる見込みとのこと。
企業の生産・経営コストの引き下げを推し進めるとのこと。工業・商業用電気料金を5%引き下げる政策を今年年末まで実施。ブロードバンド・専用回線の使用料を平均15%引き下げる。
日本なんて消費税変えるのに一苦労なのに、中国ではあっという間に税率が変わります。良いか悪いかは別として、こういう時の救済政策に関してはスピード感があって頼りになります。ノロノロと進められる日本の政治とは大違いです。
改革によって市場主体の活力を引き出し、発展の新たな原動力を増強する
これは何だかぱっと見よく分かりませんが、要は新しいことに投資していきます、というような内容かと思います。中小銀行が中小企業や零細企業をサポートする、製造業向けの中長期融資を大幅に増やす、企業による研究開発のサポート、ベンチャー投資や企業支援融資を増やす、などなど書かれています。
内需拡大戦略を実施し、経済発展パターンの転換加速を推進する
やっぱり今の中国は内需拡大が重要なんですね。中国国内だけですごい人口ですからね…。飲食、ショッピングセンター、文化、観光、家事代行などの消費者向けサービス業の回復、発展をサポートする。
その他、Eコマースと宅配便の農村への普及を支援し、農村での消費を拡大させる、と記載があります。ネットで農村と都市部を繋いで行こう、ということかな?何かアイデアでもあるのかしら。面白そうです。
他には、5Gを広げる、充電スタンドを整備する、新エネルギー車を普及させる、というのも記載があります。また、都市部の古い住宅地の改築を3万9000箇所新規着工し、エレベーターの増設を支援する、とのこと。国家鉄道建設資本金を1000億元増やす、ともあります。
地域発展戦略の実施も加速するとのこと。都市部だけでなく、地方に関してもケアしていますね。
ここの内容を見ているだけでも中国の政策のスピード感とスケールの大きさを感じます。すごい国だなぁ。
貧困脱却堅塁攻略の目標達成を確保し、農業の方策と農民の収入増を促す
昔からこの農村への配慮をし続ける中国。「農民が近隣で就業・起業するのをサポートし、公共事業の労務提供による貧困救済事業の規模を拡大し、Uターンした農民工が就業して収入を得られるようにする」とのこと。農民の生活水準を高める、といった記載もあります。
より高いレベルの対外開放を推進し、貿易・外資の基盤を安定させる
「外資を積極的に利用する」とあります。そうなんだ!自分が働いているのが日本企業(中国からすると外資企業)なのでちょっと嬉しい。もっと利用してお仕事ください笑。「国内企業と外資企業が分け隔てなく平等に遇され公平に競争する市場環境を整える」とのこと。う〜ん、もっと平等にしてほしい笑。
民生の保障と改善を中心に据え、社会諸事業の改革・発展を推進する
コロナウイルスの影響もあってか、「公衆衛生体系の整備を強化する」とあります。基本医療サービスの水準を高める、教育の公平の発展と質的向上を促す、などの記載もあります。
「基本的民生の保障を強化する」、例えば生活困窮者の基本的生活を着実に保障し、民生の保障によって失業者の再就業や企業がさらに可能となるようサポートする、など。困った人は助けましょう、という意向ですね。
最後の方には「香港」と「マカオ」に関しても記述が。「香港・マカオが経済発展と民生改善を図り、国家の発展の大局に一層溶け込むようサポートし、長期的な繁栄と安定を保っていく」とあります。
「台湾」に関しても、「台湾独立を目論む分裂の行動に断固として反対し、それらを食い止めなければならない」とあります。「台湾独立に反対し統一を促進して、我々は必ずや民族復興の明るい未来を切り開くことができるであろう」とも。なかなか強烈なメッセージに感じます。何せ「断固反対」ですから…。
そういえば、一時香港のデモが世界を駆け巡っていましたが、コロナウイルスのせいで話題にもならなくなりました。今どうなっているのでしょう…。